住みやすい家とは、どんな家でしょうか。きっとそれは、大きな家でも、ピカピカのきれいな家でもなく、また便利さだけを追求した家でもないでしょう。言わば、住む人がその家の一部分であるように感じられる住まい-。人間と呼吸をともにしているような素材に包まれている家が、本当に居心地がよく住みやすい家だと思います。たとえば、無垢(むく)材の木の床、土壁、和紙や綿素材の壁紙障子、ふすま、木製建具、畳など。昔ながらの日本家屋に使われてきた素材は、素材そのものが湿度調節し、夏の蒸し暑さや冬の乾燥を和らげてくれます。
また、自然環境の恩恵に浴する家であってほしいと思います。第一に考えたいのは風通しと採光。風の流れを得るためには、窓を二方向に造ること。風が流れると採光も良くなり、結果として南に窓が取れなくても十分明るい部屋が得られます。しかし、家具などで窓がふさがれていると風も流れず、陽光も入ってこない住み心地の悪い部屋になってしまいます。間取りだけでなく、部屋全体のレイアウトプランをしっかり立てることが必要になります。
家具の配置で工夫したいポイントの一つに、家族が集うテーブルがあります。たとえば、スペースが十分でないリビングルームでも、通路の確保や扉の開閉など機能的な条件さえ満たせば、思いきって大きな木のテーブルを置いてみてください。小さな部屋だから小さなテーブルを置く、というよりも、逆に思った以上に部屋が広く見えて、家具の質感がインテリアにゆとりを与えてくれます。ゆとりのあるテーブルでみんなが食事をし、勉強をし、団らんする。これも住み心地につながるプランのひとつなのです。
そして、もう一つ大事なことは「らしさ」です。ある家から出てきた人が「その家の人らしいな」と思われたとき、きっとその人は、その家で心地よく暮らしている人でしょう。私の仕事に対して「住んでいる人らしい家になりましたね」と言われたときが、最高に喜びを感じる瞬間です。それほど、その人らしい家を造ることは難しい作業だと思っています。
過去の「らしさ」を残しつつ、今の「らしさ」を足して、次世代へと住み継いでゆく。永く永く住み心地のよい家を残すことが、これからの建築やインテリアに求められている課題だと思います。